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委員会行政調査レポート豊島区・荒川区編

2015.09.4

8/31~9/2、文教こども委員会では、東京都豊島区、荒川区、足立区そして富山市へ行政調査に行ってきました。
今回は、調査内容をレポートします。
東京都豊島区調査
・豊島区国際アート・カルチャー都市構想について
 東京都豊島区は東京23区内では唯一、2040年度消滅可能性都市として指摘されました。そうならないためにも、人口増加に転じる必要があり、どうしても子育て支援などに目が行きがちなところをあえて狭い視野ではなく、広い視野にたった方針をとることになりました。様々な議論を経て、消滅可能性都市から持続発展都市へと転換する方針を打ちたて、「国際アート・カルチャー都市構想」が完成しました。F1会議(20~30台前半女性をF1層という)を開くことで、女性の視点でのマーケティングを開始しました。豊島区には手塚治虫氏をはじめとする著名漫画家が住んでいた「トキワ荘」があり、クールジャパンとして世界から注目されるサブカルチャーの拠点が池袋を中心に続々と誕生しています。そして3つのコンセプトのが生まれました。1、多様性を活かしたまちづくり 2、出会いが生まれる劇場空間 3、世界とのつながり人々が集まるまちづくり。神戸市でいえば長田区に似た下町の豊島区ですが、基本コンセプトの下、様々な施策を実施したため、35年ぶりに人口が増加し現在は28万人の人口になっています(他区からの転入が多い)。
・豊島区新庁舎について視察・説明
 現区長が就任した時点で、借入金残高が872億円あり古くなった区役所を立て替える財政的余裕は全くありませんでした。さまざまな知恵を活かし考え付いたのが、旧役所跡地を民間に定期借地で貸し出し、廃校小学校跡に民間分譲マンション付きの新庁舎を建てることでした。全49階立ての新庁舎は1、2階には区民交流ゾーン、民間商業者の入るテナント、3~9階が345日開かれた庁舎、10~49階が分譲マンションになっています。建設時に10階以上の部分は建設業者に売却したため、実質負担金0で新庁舎を建てることができたそうです。山、海、川が無い豊島区なので、10階にはかつての豊島区の自然を再現した「豊島の森」を整備し区内小学校の自然環境を体験できる見学・学習ルートをつけています。今年の5月に開設した新庁舎は、3階窓口で全ての業務の受付をするワンストップサービス化が実施されています。フロアマネージャーが常駐しており、スムーズに担当部局に移動することができます。
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東京都荒川区調査
・子どもの貧困対策について
荒川区では、区のドメインを「区政は区民を幸せにするシステムである」を基本姿勢にあげ、荒川区民総幸福度(GHA)の研究取り組みを始めました。その結果当面は不幸を減らす取り組みが必要との結論の下、子どもの貧困・社会排除問題研究プロジェクトがスタートしました。平成23年度に最終報告がされ、あらかわシステムが考えられました。そして、子どもの貧困対策を包括的に行うことが必要との結論が出され、産後のうつ傾向の対策などの(ママメンタルサポート事業)からスクールソーシャルワーカ、子ども家庭支援センター相談体制の強化、虐待コーディネーター、良好な学習環境にない子どもの学力不足に対応した支援事業、家庭相談の充実、支援が必要な子どもに対しての生活支援・学習支援提供団体の補助、保護者の学びなおし事業(高卒認定試験支援事業)など可能な限りの子どもを取り巻く環境作りを良好なものにするための施策を行っています。

東京23区は特別区のため、各区で独自の施策が実施することができます。須磨区も消滅可能性都市として名前があがっているので、独自での施策ができれば豊島区のように思い切ったこともできるかもしれません。しかし神戸市全体ででとなると、最大公約数的な事しかできなくなるため、我が区だけ国際カルチャー都市という訳にはいきません。しかし、新庁舎の建て方や、負の連鎖の防止などは神戸市でも非常に参考になる部分が多く、今後都市間競争に打ち勝つには、いかに創意工夫して民間でできることは民間で、公は思い切ったセーフティーネットの構築、という発想が必要ではないでしょうか。ちなみに豊島区新庁舎の上階のマンション部分は、1平米単価100万円、平均分譲価格8000万円という高額で販売され、全て完売しているそうです。もし分譲部分も区がやっておれば、かなりの利益がでたそうです。

韓国姉妹都市等提携5周年記念訪問レポート(後半)

2015.08.30

2日目午後からは、仁川広域市からKTX(韓国高速鉄道、残念ながら仏のTGVの技術を採用している)に乗り大邸(テグ)広域市に移動しました。後半は大邸広域市についてレポートします。

【視察先4箇所目】大邸デザインセンター:ここは国、市がそれぞれ50%出資して作った財団法人です。業務は主に地場産業の支援・育成やデザイナーの育成を行っています。9階部分にはデザイナー志望の学生育成をしており、24時間使えるように食、住環境が整っています。私たちが訪問した朝の9時過ぎでも、すでに学生達が集まってミーティングを開いていました(※写真1)。2年間でのべ120名が卒業しており、約100名程度が国内大手企業にデザイナーとして就職しています。3階にはマテリアルバンクと称するフロアになっており、世界中から約7000万種類の様々な素材を集めています(※写真2)。ここは、地場産業である繊維メーカーなどの素材も置いてあり、地域の地場産業の見本市や研究・確認・発信地にもなっています。利用するには会員制をとっており、企業規模により会費額が異なっているそうです。変わった素材としては、腐るプラスティック(廃棄後は自然に戻る)、光を通すコンクリート(後ろから光を通すことで図柄に見える)など面白い素材がありました。そして、高齢者雇用創出コーナーもあり、廃棄繊維(衣料)を集めて再利用するという取り組みを高齢者を雇用して行っています。3年間でのべ350人の雇用実績があります。2階にはそれらの素材を使って若手デザイナーがデザインしたグッズ販売もしています。
※写真1
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※写真2
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【視察先4箇所目】大邸薬令市(市場):周りを高い山々に囲まれた大邸市は朝鮮王朝時代から、高山などで採れる薬草に恵まれた街でもあったそうです。また、雨も少なく薬草の乾燥にも適しており昔から国内最大産地となっています。その市場が今も残っており、韓国最大の薬材市場になっています。薬材とは漢方薬の元になるもので、国内はもとより現在は中国からの輸入品も扱っており国内一の取扱量とのことで全国からバイヤーが買い付けにくるそうです。5日に1回市場が開かれるとのことでしたが、訪れた日は開催されていませんでした(※写真4)。また辺りは漢方薬小売店が乱立しており、漢方薬専門商店街化としています(※写真5)
※写真4
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※写真5
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大邸広域市は人口250万人の大きな都市(韓国第4位)で、近隣都市と合わせると約30もの大学がある教育都市でもあります。そのため繁華街は若者が多く活気を感じる街でした。また、2002サッカーワールドカップや世界陸上大会も開かれたことで有名で立派な球技場、競技場があります。現在もプロ野球(三星ライオンズ)の新しい球場が建設中です。見学にも行きましたが、市立美術館も立派なものがありました。財政を心配して、現地ガイドに聞いたところ歴代大統領が大邸市出身者が多く(現大統領も大邸市出身)とにかく国とのパイプが強く国からの補助が多いらしいです。
神戸市にもデザインセンター構想が過去あったらしく、最終的に民間企業からの不参加が伝えられ、結果実現しませんでした(現在は六甲アイランドにある神戸ファッション美術館となっている)。大邸デザインセンターは、行政から独立した機関になっており全て権限が集まってきています。それに比べて神戸市では、全て管轄部局が分かれており縦割り行政が続いておりデザイナー育成から地場産業支援までがワンストップで行われていません。このあたりの効率化が必要だと感じました。ポートアイランドには服飾メーカーも多くあることを考えれば、デザインセンターがあれば効率良くデザイナー育成や服飾デザイン・素材等の発信等ができるのではないでしょうか。
韓国に今回訪問してみて、国際空港や港湾などは、交通インフラが整っており確かに計画的に経済発展しています。しかし、旧市街に行ってみると、朝夕の交通渋滞が多く神戸市の比ではありません。街中でもバリアフリー化は進んでいない箇所もあり、観光客を迎えるサービス業の店員などの接客もまだまだと感じました。これらのことより、渋滞緩和対策のLRT導入検討や市内バリアーフリー化促進、観光客の受け入れ態勢整備など考えさせらた有意義な訪問視察でした。最後に、市長をはじめとする関係部局、先輩議員の皆さま、同行された方々ありがとうございました。

韓国姉妹都市等提携5周年記念訪問レポート(前編)

2015.08.29

8/26から8/28まで、神戸市と韓国姉妹都市提携している仁川広域市、大邸広域市に訪問視察してきました。
前編として、仁川(インチョン)広域市の視察についてレポートします。

【視察先1箇所目】:仁川経済自由区域(Inchon Free Economic Zone=IFEZ)は、松島(ソンド)、永宗(ヨンゾン)、青蘿(チョンラ)の3つのエリアに分けて特化開発されています。各エリアはそれそれが橋で繋がっており、仁川国際空港、港湾施設とのアクセスの良さの利便性を活かし、多くの外国人投資額が集まってきております。
(2015.4.時点で71,125億円、10年前と比較して約3倍)またそれに伴って、人口が10年前比較で7.8倍(227,407人)となっております。各エリアごと開発方向を説明すると、“永宗”は、国際空港のあるエリアで航空・観光・レジャー産業(カジノ複合リゾート)、“青蘿”は金融・観光・レジャー・先端産業、“松島”は国際ビジネス・IT・大学・先端国際サービスなどに分けられています。写真は松島地区。
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【視察先2箇所目】:コンパクトスマートシティ。上記の経済自由区域はコンパクトスマートシティとして、各地区計画・設置されており、生活用排水や雨水を道路清掃用や公園用水として、または家庭ゴミなどが固形燃料や焼却エネルギー利用などの再利用システムが採用されています。そのためこれらの二酸化炭素排出権取引、燃料販売などで利益が生まれます。驚いたことにこの地区にはゴミ収集車がありません。すべてこれらのマンション(韓国では高層住宅をマンションという)の地下にコンベアのようなものがあり、一箇所に集められるそうです。
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【視察先3箇所目】:仁川港湾公社。1883年開港という歴史をもつ港町として栄えた仁川港を一括して管理・運営するのが仁川港湾公社です(国が100%出資していますが、現在は民間出身が社長を務めています)。北港、内港、南港、新港から成り立ちます。仁川は潮の干満の差が激しいことで有名なため、内港利用の際は必ず水門を利用して貨物船を内港誘導します。内港は潮の干満に関わらず一定の水深を保っており、船底が底につくことはありません(それを利用した朝鮮戦争の仁川上陸作戦は有名です)。水門は2つあり、1万トンまで(写真の手前)、5万トンまで(写真の奥側)と利用トン数が決まっておりこれらの開閉も重要な業務になっております。なお現在は貨物船の巨大化に伴って、新港に干満差に関係なく離着岸できる新バースが建設中です(現在6バース完成)。
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仁川広域市は人口290万人と韓国第3位の都市で、国策で計画的に経済自由区域を国際空港、港湾を一体化して韓国経済を支えています。そして、資源の有効活用も積極的に行われており見習う点が多々ありました。神戸市は関西国際空港、神戸空港、医療産業都市、港湾、ポーアイ・六アイの住居部分などの一体化が進んでおらず、アクセス面等の課題がまだまだあります。例えば神戸市も、各エリアごとにテーマを持ち特色ある地域づくりをすればいいのではないかと考えます。
なお、韓国では韓中FTAが締結されており、仁川港貨物取り扱い量約60%が中国だそうです。もし日韓中FTA締結が行われば3カ国貿易が実行でき、阪神港も発展が期待できると感じました。
そして私が現地の方に聞いた影の部分としては、仁川市はアジア陸上大会の誘致・運営で多額な額を使い、また港湾モノレール計画もレールだけ建設したが、そのまま資金ショートで業者が倒産するなどの過剰投資が過ぎ、新港バース計画も止まっているとのことです。また、ソウルのベッドタウン化で不動産上昇しており年々住み難くなっており、財政に余裕ができれば市税が減額されるという話も反故されているという状況があるそうです。国も一時の勢いがなく、釜山の投資を優先しておりこのまま仁川港が発展し続けるかは不明との個人的見解でした。
この点からは、地域はあくまでも国に頼りきるのではなく、地域で自立する運営計画を立てるべきだと感じました。
後半に続く。

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