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福祉環境委員会行政視察

2016.09.2

福祉環境委員会行政視察

日程 : 平成28年8月24日~26日

調査先:(1)川崎市(8月24日午後)

・水素社会の実現に向けた川崎水素戦略について

・生活自立・仕事相談センター「だいJOBセンター」について

(2)東京都(8月25日午前)

・東京チャレンジオフィスについて

(3)世田谷区(8月25日午後)

・ごみ屋敷対策について

(4)横浜市(8月26日午前)

・第2期健康横浜21よこはま健康アクションについて

・環境未来都市にふさわしいエネルギー施策と健康アクションについて

 

8月24日 13:30~14:50

川崎市:川崎市議会、水素社会の実現に向けた川崎水素戦略(川崎市臨海部国際戦略本部)

(説明)

川崎市は過去の公害都市というイメージ払拭のため、グリーンイノベーションの推進のため、環境先進都市として環境問題に取り組んできた経緯があり、低炭素・公害対策・資源循環・エネルギー等に係る多くの環境技術・産業が集積してきた。そして、環境技術・環境産業を活かしたサスティナブルシティの創造をめざす姿とした。

環境技術に関する取組の中、多様な発電施設を、風力、太陽光、バイオマスを始めとした自然再生エネルギーや、火力(LNG、灯油、重油、廃棄物)などを臨海部に集積し約630万kWの発電能力を生み出すことができるようになった。その中で、川崎市産業地帯の競争力強化の取組として、水素エネルギーの導入・利活用を目標にしての水素社会の実現に向けた川崎水素戦略を策定し「未来型環境・産業都市」の実現を目指すことになった。

川崎水素戦略としては、6つの事業モデルを実証しながら、水素供給システムの構築、社会認知度向上、他分野にわたる水素利用の拡大を目指している。

事業モデル

  1. 水素サプライチェーン構築モデル(有機ケミカルハイドライド法を活用した水素サプライチェーンの構築実証・千代田コーポレーション、NEDO)
  2. 水素BCPモデル(再生可能エネルギーと水素を用いた自立型水素エネルギー供給システム・東芝)ハウステンボスではこれを利用して夏の熱エネルギーを水素に変換して備蓄している。
  3. 地域循環型水素地産地消モデル(使用済プラスチック由来炭素水素を活用した地域循環水素地産地消モデル・昭和電工、環境省)
  4. 産業分野における低炭素水素利活用モデル(京浜臨海部での低炭素水素活用実証プロジェクト・トヨタ自動車、岩谷産業、東芝、神奈川県、横浜市、川崎市)燃料フォークリフトの普及拡大モデル
  5. 鉄道駅におけるCO2フリー水素活用モデル(JR南武線 武蔵溝ノ口駅「エコステ」モデル駅の整備・JR東日本)乗降客数16万人/日の鉄道駅への水素エネルギーの導入・利活用
  6. パッケージ型水素ステーションモデル(水素ステーションのパッケージ化・三菱化工機)

他、水素ステーション、FCVの導入(移動式水素ステーション・JXエネルギー株式会社)

燃料電池自動車の導入(県内70台、水素ステーション移動式含め12箇所)

上記の事業を中心に、水素社会の実現に向けて多様な主体との連携(産学公民)を密にして施策を実施している。

なかでも、個人的に注目したのは、水素BCPモデルである東芝が開発した、自立型水素エネルギー供給システムである。これは自立型の供給システムで、300人・1週間分の電気と温水を供給できます。サイズは20フィートコンテナと同サイズで世界標準サイズになりどこへでも輸送可能、設置可能です。電源は太陽光発電設備を備え、場所さえあれば設置できます。なお、価格は2億円弱とのことですが量産可能となれば価格は下がるとのことです。川崎市では各企業が競って水素事業を展開しており、様々な可能性が試されています。神戸市もエネルギーや環境対策の一環として、各企業のモデル事業を採用して地理的に最も適応する水素事業を採用するべきだと考えます。今回は、時間の都合上現地視察はできませんでしたが、次回は是非、現地視察を行いたいと思います。

 

8月24日 15:00~16:00

川崎市:川崎市生活自立・仕事相談センター「だいJOBセンター」(説明・視察)

だいJOBセンターでは経済的な問題だけでなく、心の問題、家庭の問題、健康上の問題、法律に関する問題など様々な問題を抱えた市民の無料の相談窓口である。専門の支援員が相談を受け、適切な窓口へ案内しており、状況によっては支援員が制度や現地に同行して手続きや自立をサポートしている。

川崎市の保護率は2.18%(神戸市は3%強)、生活保護扶助費約600億円(平成27年度)、市の財政の10%を占めている。市内でも特に南部地区(川崎区、幸区)の保護率が高いため、JR川崎駅前にセンターを設けている。なお、運営は委託事業制度をとっている。だいJOBセンターの特徴は、寄り添い型支援、チーム支援が行われており、精神保健支援、就労支援、居住家計支援、専門相談(弁護士)、住居確保給付金など相談内容によって各担当支援員が対応する形になっている。昨年度は合計1,494名の相談者が来訪したのだが、課題が4,018件、1人平均2.7個の課題があり、就職相談にも複雑な問題が関係している状況がみられる。その内では、就職相談が1000件弱と一番多く、対象者505人のうち就職者330人、就職率65.3%である。求人は、清掃、警備、調理補助の3分野が多く雇用していただいた企業は川崎市の協力企業となる。

年間予算額は約1億円、効果額は2億8140万円+納税額等の試算している。川崎市として取り組みの工夫としては窓口を広げるための、メディア、HP、広報誌などを使った告知方法。困りごとに応じた誘導等、第2のセーフティネット(従来の給付型支援制度)で支えられない方の窓口となるよう工夫している。

従来の失業者に対するセーフティーネットであるハローワークや、各種支援制度だけでなく、もう一歩踏み込んだ複雑な課題を抱えた生活支援が必要な方対象のきめ細やかな相談所が本市でも必要であると感じる。生活の多様化、少子高齢化等個人の抱える問題は多岐に渡っておりこういった寄り添い型支援は今後検討する必要があるだろう。

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8月25日 10:10~11:30

東京都:東京都議会、東京都庁内「東京チャレンジオフィス」(説明・視察)

今年度より東京都庁内に一般企業の就職を目指す知的障害者、精神障害者を都庁において一定期間雇用し、業務経験を積む機会を提供することで一般企業への就労を後押ししようという目的のため、オフィスを設け「東京チャレンジオフィス」としている。

内容は庁舎内の各部局からの軽作業のみの依頼を受け付けており、外部(外郭団体等)の業務は引き受けていない。受注業務内容は、事務補助作業や軽作業を請け負い、センターの支援員が能力・適正を見極めて適材適所に配置して派遣している。今年度は17名の障害者を非常勤職員として受け入れている。雇用期間は1年間(雇用期間を2回上限に更新可能)。賃金は月16日間勤務で115400円(交通費別)となっており、年間予算は3700万円を一般財源で確保している。

実際に東京チャレンジオフィスに視察に伺ったところ、都庁内の広いスペースにオフィスが設けられており、ホワイトボードに各支援員と担当障害者名が記載されており、月単位とその日のスケジュールが詳細に記載されていた。各部局の毎日のルーティン業務や臨時業務依頼があるため、何らかの仕事を与えるよう支援員が考え、仕事がない日というのは作らない。

本市の場合は、まずオフィススペースの確保や各部局の仕事量と予算など検討する必要がある。東京都庁とは仕事量が全く違うと思うのでそれに見合った雇用数を考えると、全くそのままの事業制度を取り入れるのは無理があるのでは、と考える。外部の事業者(NPO法人)などに委託することも含め検討する必要があると考える。

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8月25日 13:30~15:00

東京都世田谷区:世田谷区議会、世田谷区住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例いわゆる「ごみ屋敷」対策について(説明)

世田谷区では、平成28年4月1日から「世田谷区住居等の適正な管理による良好な生活環境の保全に関する条例」(いわゆる「ごみ屋敷条例))を施行し、地域における良好な生活環境の保全を図ることとしました。条例の対象となるのは「管理不全な状態」にあると判断される住居等です。「管理不全な状態」にあるかどうかは、職員による現場調査の後、専門家等からなる「世田谷区生活環境保全審査会」で検討した結果に基づき、判断されます。

ごみ屋敷条例では、次の事項が定められました。(1)居住者の責務として、居住者は住居等が管理不全な状態にならないよう適切な管理に努める必要があります。(2)区の責務として、居住者等が適切な管理をすることができるよう必要な施策を総合的に推進し、管理不全な状態になることを予防するための対策を講じるとともに、管理不全な状態を解消するための措置を講じます。

対応の流れとしては「管理不全な住居」に関する苦情や相談を受けた後は、現場確認→整理整頓の依頼→指導・勧告→区が必要な措置→緊急対応、という流れになります。居住者が自ら行う場合は、掃除用具の支給や区役所から人材を派遣して行う場合もあります。行政代執行はありません。

私の質問で本市では氏名公表まで行いますが、上記条例では氏名の公表は議論されなかったのか、と質問すると、「全く議論されなかった。」との事でした。あくまでも居住者が対象になり、これまでも行政が手伝うと居住者も動き解決するという状況だったので、解決までの流れだけが議論されたそうでした。また、同じ理由で行政代執行も条例には盛り込まれていません。同じ「ごみ屋敷条例」にしても地域の課題も違えば、対応も違うということがよく分かりました。本市ではより厳しい「氏名公表」まで行うとあることが果たして適切かどうかは判断の分かれるところではありますが、個人的には、居住者、所有者の責により「管理不全建物」を無くすべきではあると共に、個々の抱える様々な事情を考慮する必要もありますが、最後は行政代執行、氏名公表までは条例に盛り込むことには賛成であります。

 

8月26日 9:30~11:30

横浜市:横浜市会、・第2期健康横浜21 よこはま健康アクションについて・環境未来都市にふさわしいエネルギー施策とエネルギーアクションプランについて(説明)

横浜市では平成25年度から平成34年度までの10年間計画で、健康寿命の延長を目指して世代別の行動目標を立てました。

その中での特長としては「よこはまウォーキングポイント事業」です。「健康寿命日本一」を目標に、日常生活の中で気軽に楽しみながら歩数計を持ち歩き、ウォーキングを通じた健康づくりに取り組んでいます。横浜市の高齢化率は27年9月現在で23.1%であり、超高齢化社会に突入しており、2025年度には高齢者が約100万人に達し、高齢化が26%となる見込み。(4人に1人以上の方が65歳以上の高齢者)

よこはまウォーキングポイントとは、無償で歩数計を配布して市内の協力店舗・施設(1000か所強)に設置されている専用読み取りリーダーに歩数計をのせることで、ポイントが貯まり、3か月に1回、200ポイント以上の方を対象に3000円相当の商品券があたる自動抽選に参加できます。また、参加者全員で目標歩数(平均10万歩/月)を達成した月は、本事業から社会貢献活動(国連WFP)に20万円寄付されます。

参加実績は今年から18歳以上に参加対象年齢が引き下げられたこともあり(昨年度は40歳以上)、平成28年度7月現在で約19万人が参加しており、参加事業者数も約400事業所となっている。横浜市では参加年齢拡大、商品券が当選する、ということもあり参加者増で大きな健康促進事業になっている。本市でも歩数計配布は行っていたが、ただやみくもに配布するだけでは尻すぼみになっている感があり、今後は横浜市を見習ってインセンティブの導入やスマホアプリを使ったウォーキング事業を取り入れれば、幅広い年齢層対象にした、気軽な健康増進事業となる可能性があると感じた。

 

続いて、横浜市 温暖化対策統括本部より「横浜市の温暖化対策」について説明を受けた。

横浜市域の温室効果ガス排出量削減のため、平成27年3月策定した「横浜市エネルギーアクションプラン」に基づき、横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証事業で培ったノウハウを生かし、エネルギー循環環境都市を目指すため、新たな公民連携組織を平成27年4月に設立した。プロジェクトの導入実績は、目標数値を上回っており実証効果も表れており、温室効果ガス削減に役立っている。また、エネルギー連携の取組として市大センター病院と南区の庁舎を地中ケーブルで繋ぎ、コージェネレーションシステムを使ってエネルギー連携を行っている。コスト削減は年間4000万円、CO2削減は年間1000tとなっている。再生可能エネルギー分野でも、まちづくりと一体となった取組が進められており、例えば断熱効果のあるペアガラス導入団地(金沢区)や、電力使用量をより減らすことで商品券が貰える地区(東急電鉄との協働)など様々な取組みが行われている。

その他、燃料電池自動車の導入促進、水素ステーションの展開(市内6か所、内移動式水素ステーション2か所)、家庭用燃料電池の導入促進など水素活用の可能性も試している。

担当委員からの質問で、各都市では競って水素エネルギーの活用を未来のエネルギー代表みたいに言っているが、本当に未来の水素社会は二酸化酸素削減につながりエネルギー施策はバラ色にひろがるのか、という質問があった。担当者の意見は、水素を取り出すにもエネルギーが必要であり二酸化炭素は排出している。水素単体でみると水しか残らないが、貯蔵の難しさ、ステーションの高価格など、決して言うほどバラ色ではない。ただ、今後の技術革新も見込まれこれらの課題が解決されれば、再生可能エネルギーの大きな位置を占めることには間違いないと思うとのことであった。私自身もエネルギーのベストミックス、可能であれば再生エネルギーだけでのベストミックスにつながる可能性が水素にはあると考える。本市においても、サスティナブル・スマートシティを目指し水素活用を含めた温暖化対策にもっと力を入れるべきである。

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