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米国視察報告・ボーイング工場編(3)

2017.11.6

2017.7.28  10:00~12:00

ボーイングエバレット工場 視察報告(The Boeing Company Everett Factory)

 

BOEING Gary Konop 氏、James E Show 氏

川崎重工  丹羽 哲雄 氏、高尾 航 氏

 

シアトル近郊のワシントン州エバレットにある、主力飛行機組み立て工場である。敷地はボーイング工場世界一、また工場は世界最大の容積を持つ建築物。敷地面積414ha(ポートアイランドとほぼ同等)、工場床面積39万8千㎡、容積は1330万㎥、本来はボーイング747製造組み立てのために作られた工場である。現在は、主に747型、767型、777型、787型各機が制作されている。組み立て工場の南側には、滑走路が2本配置されている。

工場入り口では、乗ってきたバスから降ろされ、受付センターのような所でパスポート提示し、あらかじめ用意されたネームプレートを受け取ったうえ、工場内専用バスに乗り換える。バスに乗り、しばらく走ると壁面一面に航空機の絵の描いた組み立て工場に到着。壁面だと思った壁は、巨大な扉になっており、ここから完成した航空機が搬出される。

工場入口に入るとすぐ、ミーティングルームのような所で、工場敷地、工場内の説明を受けた後、目の保護のため透明なサングラスのようなゴーグルを着用して工場内を案内される。

床面には歩行ラインが引かれており、撮影は許可された者しか許されない。

ここでは、3万5千人の従業員が24時間3交代で勤務している。夜間勤務は、組み立て作業は行わず主に、部品ピッキング作業が中心である。工場内には冷暖房設備がなく、夏の暑い日には工場の扉の開閉で室温を調整するとのこと。

工場内は真ん中に1キロメートルもあるメイン通路があり、その両サイド500メートずつ分けられている。メイン通路を挟むようにして4つの組み立てラインがあり、それぞれ、787、747-8、767、777型機の製造ラインとなっている。ただし、767型機は主に、軍用の輸送機と空中給油機に使用されているため、見学禁止になっており組み立て作業も米国人以外はできないとの事である。

工場内では、747型機ダッシュ8型機の窓のない貨物機が組み立てられており、一世を風靡したこの機体も燃費等の関係で、主力機が中型機に移行しているため受注数が残り2台となっている。なお、747型機で組み立て期間が4カ月半となっている(ちなみに777型機は2カ月半)。

787ドリームライナーは機体が炭素繊維などの複合素材でできている最新機で、そのため大幅な軽量化や従来比較での20%燃費向上などを実現している。主翼や胴体などは、三菱重工、川崎重工、富士重工など多くの日本企業も参加している。

工場内はロボット化により、安全、効率化などの日本式“カイゼン”が意識されているとのこと。(“カイゼン”はそのままの用語で使用されている。)そのため、以前は同位置での組み立てが、カイゼンされ日本式のU字ラインでの移動式組み立てに改善されている。(1時間3㎝移動する)胴体接合は、前胴部、中胴部、後胴部と3分別で接合され組み立てられている。

ペイントされる前の機体には、薄緑色にペイントされており、これは塗装前の機体保護材が塗られているとの事である。なお、機体を製造された国によって微妙に色の違いが見られた。

胴体はターンフィクチャーという円形の型枠のようなもので、上面部を接合して、反転して底の部分を上部にして接合するとの事である。これは、作業効率と重力の関係との事であったが、最新機では反転しなくても接合できるようになったとの事である。

この広大なボーイングエバレット工場を見学して、航空機産業の裾野の広さ、それに伴う雇用の多さ、作業効率の日々のカイゼンの取り組み、航空技術の進歩などを短時間に感じた見学であった。

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