SUBIMG
profile
policy
report


ハンブルク行政視察報告 4

2016.05.27

5月20日(金)

9:15~

■ライフサイエンスクラスター(ライフサイエンスノルド)、レクチャー及び意見交換

Dr.Hinrich Habeck氏

ハンブルクとシュレスヴィッヒ・ホルシュタイン州共同で設立。現在の名称はライフサイエンスノルド。約500社の医療技術、バイオ、医薬品企業が参加している。医療部門、経済部門、法律部門、IT関連部門、人材育成部門、創薬研究部門等から6グループ10人が集まり方向性を決めている。2010年度より官民一体の団体となる。

2大学(ハンブルク大学、リューベック大学)と150病院を擁し、雇用数20万人。14のライフサイエンスに特化した研究センターがあり、9大学でライフサイエンスの講座が開かれており、12の研究所が存在。また、黒海、バルト海沿岸に、海洋バイオ研究機関の活動拠点もあり、世界中の海中からの創薬物質を探している。大学、大学病院を中心にして

研究所、起業家を集積しており、どんな研究にも対応できるようになっている。例えば、花粉症の創薬研究のために必要であれば、全種類の花粉物質サンプルや、施設、専門分野の研究者などがすぐにそろう。現在は、磁石の粉末を使っての人体健康調査を研究しており実用化が近く将来性を感じているとの事である。

神戸の医療産業都市はアメリカ型で1か所に集中しているが、ドイツはそうではない。大学や大学病院のもとに研究機関を集め、企業に働きかけ集まってもらいクラスターができるので国内各地にクラスターが点在している。担当のHabeck氏は、3日前まで神戸に来ており、医療産業都市で交渉を行っていた。所長が2回ほど神戸を訪れておりJETROのプログラムを通じ神戸との交流を促進している。2月に5社、5月に5社協議しており、共同してやっていきたいと考えている。また、11月には経済団体が神戸からドイツに来る予定である。神戸の医療産業都市はスーパーコンピューター京が近辺にあり大変魅力的な立地状態であり、進出希望のドイツ企業があれば神戸を勧めたいと思っている。

2014年の経済効果は、40億ユーロ(約4500億円)。

 

11:45~

■シスメックス(ライフサイエンス参加企業)レクチャー及び視察 Dr.Frank Diehl氏

神戸市に本社があるシスメックスが、ハンブルクのライフサイエンスクラスターに参加しており現地法人を作っている。シスメックス・アイノックス(SysmexInostics)はLiquid Biopsy Cancer Blood Test(血液を使ったガンの診断)血球診断(個別化医療)を主としており、従来は血液でガンの発見が可能だったものが、更に進化して血液により、患者の体質を判断することができるようになり、抗がん剤の薬剤投与による効果の有無を調べることができるようになった。その事より、効果の少ない患者には薬を投与しないことで薬害を防ぐことができるようになった。遺伝子分析の研究を行っており、DNAの全ての配列を読むことができると将来発症する予定のすべてのガンの種類が解るようになる。

究極の目標は、血液採取からレポート作成までが自動化できるように目指している。

神戸本社から6か月の研修期間で、女性の研究者が来ていた。

実際に業務している部屋を視察させていただいた。もちろんガラス越しにではあるが、最新の設備により、血球診断処理が行われていた。最も注意することが、外部からの物質混入とのことで、使い捨てのブルーの着衣、靴にも使い捨てのカバーが着用されるなどで、絶対に血液に外部物質が混入し汚染されないように細心の注意が図られていた。思ったよりも狭いスペースに検査機等が置かれていいるため、外部からは何をしているのか解らない雰囲気である。

15:00~

■エアバス社、レクチャー及び工場内視察

エアバス社の本社はフランスのトゥールーズにあり、売上高は全体で7兆円、そのうち民間用は5兆円を占めている。約55000人の従業員で国籍は100か国に及び国際的な企業であり、それがイノベーションを起こすカギとなっていると考えている。

ハンブルクには関連企業400社が集積、従業員17200人、主に各国からの航空機のパーツが集められ組み立て工程がここで行われている。現在エアバスの航空機はA320のヒットにより、需要が供給を上回っている状態である。15年で航空機の需要はさらに倍増する予想であり、航空機シェア50%を確保したい。日本との関係は、ANA1997年より取引開始、JALは2013年より取引しており、日本では1200億円の売り上げがある。日本とは炭素繊維等で東レ、ジャムコと協力関係にある。

工場内を視察するが、広大なエアバス社に入る前にはパスポート持参で事前に申し込みが必要であった。会社の入り口で、エアバス社が用意したバスに乗り換えオフィスビルに向かう。オフィスビル内でレクチャーを受けた後、巨大な工場内に入る。最初入った工場は、A320の胴体後ろ部分(真ん中から後半部分)が9機並んでおり、電気系統部品などの取り付けが行われているようだった。コンベアに1機ずつ載せられ、担当チームが作業をしており1時間で数センチ動くようになっている。月から金まで週5日2交代で作業するようになっており、2日で1台が仕上がる計算である。10年先まで予約が入っているとのことだが、3交代にする訳でもなく、作業ピッチを速める訳でもなく同じペースで作業が進められる。注文が多ければ、24時間工場はフル稼働する日本では考えられず質問してみたが、品質を保持するためには、従業員を過酷な労働をさせる訳にはいかない、との事であった。工場の中央に巨大な時計があり、時間になれば作業が終わってなくても終了するらしい。

つぎの工程の工場に移動すると、ここでは、様々な国から作られた航空機のパーツが合体される組立工程の作業が行われていた。ここでも相変わらず、ラジオから音楽をながしながらの急ぐでもなくマイペースでの作業が行われていた。前後の胴体、垂直尾翼、主翼、コクピット、などが組まれていき、ここまでくれば航空機らしくなってきて、その巨大さを真近に感じることができる。尾翼などはすでに塗装されており、どこの国の航空機かわかるようになっていた(胴体は未塗装)。1台中国の航空機らしいものが、組み立てられていたが垂直尾翼にドイツの国旗がペイントされていたので、不思議に思い聞いてみた。エアバス社では購入の際は全てキャッシュでの購入になっており、支払いが終わっていない機体は完成してテストフライトが終わるまでは、エアバス・ハンブルク社の所有のため、ドイツの国旗が描かれている。その後、キャッシュで支払いが終わればドイツ国旗が消されるとの事であった。ちなみに工場内は撮影が禁止となっている。

※エアバス社

image

 

 

 

カテゴリー
最新の記事5件