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ハンブルク行政視察報告 5

2016.05.27

【ハンブルク行政視察を終えて】

神戸市は最先端医療産業都市を目指し、ポートアイランドにメディカルクラスターの形成をしている関係上、ハンブルクのクラスター形成施策は見本になる部分が多々あった。神戸市と比較すると、ハンブルクは8分野もの多分野に渡るクラスターを形成しているため規模はもちろん違うのだが、医療産業に関して言えば神戸市は決して引けを取らないと感じた。スパコン“京”を中心として、300余りもの医療機関を集積している地区は世界にも類を見ないし、ハンブルクの医療関係者も度々の訪問がその注目の高さを意味している。今後、神戸に足りないことは、産官学連携においての“学”の部分ではないだろうか。実際大学は近隣にあるのだが、もっと予算を投入して世界各国から優秀な学生を留学させて研究・開発に重点をおくなどのグローバルな人材育成が急がれるのではないだろうか。

また、港湾施策では神戸市はハンブルクと比較しても遅れをとっている。港湾ロジステックスでは、ITをフル活用し積み荷の搬送までをいかに迅速化するかが、勝負のカギとなっている部分は見習うべきであるし、神戸市の場合では積み荷はほぼ運搬車での搬送になり、その後鉄道での輸送になるために時間的ロスがでる。港湾周辺の道路事情も考えると、高速湾岸線の整備、IoT化は急がれるところである。

それに伴い、ポートアイランドもスマートコンパクトシティ化すればどうかと考える。ドイツでは、常に環境保全、エネルギー問題、CO2削減が前提にある。エネルギーの地産地消は今後日本が抱える大きなテーマであり、まず神戸から実施してみればどうか。例えば、ポートアイランドで風力発電、太陽光発電、バイオマス発電施設などを神戸空港周辺の作り、生み出されたエネルギーはポートアイランド内で消費する。余剰電力は水素エネルギー実験施設で水素に返還するなどの取り組みができれば、環境貢献都市として宣言できるのではないだろうか。

ハンブルクのような他分野のクラスター形成は困難が伴うと思うが、神戸市関連施設からは既にある医療産業に加え、それに伴う健康ケア(ライフサイエンス)、再生エネルギー、阪神港の港湾ロジステックなどは行政主導でのクラスター形成が可能ではないかと考える。

ドイツは道州制により、州により独自の取り組みが可能になる点が日本とは違うのだが、全体の目標が決まればそれに向けて徹底していると感じる。例えば、2022年に原発ゼロを国が決めれば全てがその方向に向けて進む。北ドイツは既にエネルギー対策については、自然再生エネルギーで賄えるようになっているし、それに伴いCO2削減も進んでいる。地理的な関係で、夜は10時ごろまで明るいためサマータイムを導入することで仕事が終わってからも,市民が十分余暇を楽しむ時間があり国内消費にも繋がっている。オフィス内も薄暗いが特に問題なさそうな感じで各自が仕事をしている。日本人には不便に感じるのだが、日没後はコンビニもないので街全体が暗いのだドイツの方は特に問題はなさそうである。

ユーロ導入によって、輸出国であるドイツは非常に恩恵を受けており、ハンブルクも景気の良さを感じました。街中いたるところで工事しており、スクラップアンドビルドが実施されている。超近代的な劇場が建設されている一方、町並みにはレンガ調の色調で揃っており、統一感があった。街中にはとにかく緑が多く、公園や芝生、街路樹は神戸の比ではありません。一部の建物を除き、高層建築物が少なく落葉樹より高い建物の建設が禁止されているとのことで、落ち着きがある雰囲気を感じた。神戸市も都市景観審議会等において、区域内の新規の建物に関しては事前に審議はしているものの、法的拘束がないためお願いレベルになっており統一感がないのは否めない。壁面の色調、建物の高さ制限などは条例にて規制する必要があるので、日本では各都市の特色ある街並み作りは難しいとは思いますが、神戸らしい街並み形成をするためには必要です。

交通事情は、さすがに自動車先端国のため自動車が多く渋滞も発生していました。交通マナーも決して良いとはいえません。至る場所で路上駐車が見られたところをみると、日本ほど自動車のパーキング場が発達している国はないのではないでしょうか。日本ではハイブリッド車が主流で、燃費節約志向が高いのですが、ドイツでも販売しているはずですが全くハイブリッド車は見かけませんでした。代わりにクリーンディーゼルと言われるディーゼル車が主流となっており、電気自動車も日本以上に普及していましたまた、街中でEVステーションがあちらこちらに目につく場所にあり、水素ステーションも見かけましたので、今後は一気に水素自動車に傾くのではないでしょうか。神戸市においても民間との共同で水素ステーションを市内の中心地に設置して、市が所有している水素自動車トヨタ「MIRAI」をフル稼働して水素エネルギーの街をアピールする必要があります。

また、BRTが採用されており、市民の多くが利用していましたので、神戸市も市内の渋滞緩和や環境問題、歩行者に優しい街づくりの観点ではBRTの採用の検討する必要があるのではないでしょうか。

今回のドイツハンブルク行政視察においては、神戸市とは港街という大きな共通点があり、大いに参考になりました。また、環境先端都市ということでエネルギー施策、CO2排出削減は日本よりも先行しており今後の見本となりました。

しかし、残念に感じたことは環境都市という割には、街中には煙草の吸殻やゴミが多く、壁面、公共施設には必ず落書きが見られました。この点、我が国はまだまだ清潔な国だなということを実感しました。

※市内でみられる風力発電

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